お薬相談と備忘録

アトピー性皮膚炎に対する抗うつ薬処方

アトピー性皮膚炎に対する抗うつ薬処方

薬学系情報誌を購読していて気になったこと。

記事の内容は「アトピー性皮膚炎の患者にミルタザピン(リフレックス、レメロン)が処方された処方意図」について。

ミルタザピンと言えば抗うつ薬・NaSSAですが、皮膚科から実際にこういった処方を受けたことがなかったので備忘録として記録します。

皮膚科領域における心身医学

心理的な原因から体に何らかの症状がでることを「心身症」と言います。それが下痢腹痛として出るか、めまいとして出るか・・・それは人それぞれです。

この心身症の症状のひとつにアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などの皮膚疾患があります。

理由は様々であれ、”ストレス”がきっかけになって皮膚疾患として症状が出る場合と、皮膚疾患そのものがストレスの原因になって症状が悪化する場合が考えられます。

個人的には日々患者さんと接するに当たって、前者しか頭に入っていなかったので、今回の情報誌の内容がかなり印象に残りました。

この記事の内容としては「過去にアトピー性皮膚炎の既往がある女性が、仕事のストレスが症状の再発につながり、気分の落ち込みが見られたため、抗うつ薬を処方した結果、気分の落ち込みが減り、かゆみの訴えが現象・皮膚炎も改善につながった」ということが書かれていました。

ストレスがかかってしまった場合は、原因となるストレスをうまく発散できる様にする。

それでも気分が落ち込んでしまったときは、抗不安薬等の、気持ちの落ち込みを改善する薬を服用する。

心的な面の治療も行う、皮膚科心身症を専門にしている皮膚科もあります。数は多くないですが、治療が継続できるように、患者さん個人個人に合った皮膚科を探すのも大事な選択だと感じました。

処方される可能性のある薬剤

向精神薬の多くは眠気・ふらつき・口渇などを生じるため、皮膚科治療でよく用いる抗アレルギー薬との併用には注意が必要です。

皮膚科領域だけでなく、他診療科から処方される薬剤の中にも、眠気ふらつき等の副作用が出るものが多くあります。

特に高齢者は色んな診療科から処方されている可能性もあるため、併用薬については注意しなくてはなりませんね。

ステロイドや保湿剤・抗ヒスタミン薬とともに処方される可能性のある薬として、以下のようなものが挙げられます。

睡眠薬

「かゆみがあって眠れない」と訴える患者に処方されていることが多いです。

心身医学にさほど精通していないと思われる皮膚科医からも処方されているような印象で、処方されているのを比較的よく見ます。

前よりはかなり減ってきたと思いますが、高齢者を中心に他科でも眠剤が処方されているケースがあるため、注意したいところです。

抗うつ薬

皮膚科心身症での使い方として、気持ちの落ち込みが続いている時、意欲が低下して生活に支障が出るとき、寝付けず夜間に途中で覚醒するとき、イライラや焦りが強いときに使用されます。

そのほかに皮膚科的な使い方として、かゆみが抗アレルギー薬で効果が不十分なときや搔破が激しいときなどにも用いることができます。

抗不安薬

皮膚科心身症での使い方として、疾患に関する不安があるとき、発疹に対する他人から目が気になる時、寝つきが悪いとき等に使用されます。

抗うつ薬と同様に、かゆみが抗アレルギー薬で効果が不十分なときや搔破が激しいときなどにも用いることができます。

これに関してはエチゾラム(デパス)が1.5mg分3で処方されているパターンをまれに見ます。

デパスが選択されている理由は、今は30日の処方制限がありますが、以前は普通薬として扱われていたからでしょうか。そんなに心身症を専門としていない先生方からも処方がある印象です。

もちろんこれ以外の不安薬が用いられることもあります。

抗てんかん薬

皮膚科心身症で用いるのは一部の薬。最も使用頻度が高いのは帯状疱疹後神経痛です。

気分を安定させるのに用いるのはテグレトール(カルバマゼピン)とデパケン・セレニカ(バルプロ酸ナトリウム)が有用。

帯状疱疹後疼痛にはリリカ(プレガバリン)がよく処方されている印象なので、あえて抗てんかん薬が処方されている例は減っているのではないかな、と思います。

実際に処方されることは多いのか

現時点で皮膚科心身症を専門にしている先生方は、あまり多くないと感じています。

ですが、SNSの普及・ますます激しくなる競争社会、管理社会の中で、ストレスを心への負担が大きくなる方も沢山出てくるのではないかと思っています。

感覚的にですが、皮膚科では基本的に抗ヒスタミン薬やステロイドを中心とした治療を行い、気持ちの面で不安定な場合は、患者さん個人が別のメンタルクリニックを受診しているという場合が多く見受けられます。

薬局薬剤師としても、皮膚科から抗うつ薬等が処方されるイメージはなく、「あれ?皮膚科からこの処方・・・大丈夫かな?保険適用になるの?」とまず疑問を覚えると思います。

まずは皮膚科心身症という分野を知り、薬剤師としてもこういった処方があることを念頭に置き、患者さんの心の負担を軽減できるように業務にあたりたいですね。

●参考文献●

井田恭子編:日経DIプレミアム2021年4月号(No.282).PE001
羽白誠:皮膚科における精神科的薬物療法.Jpn J Psychosom Med57:1237-1244, 2017